特定オブジェクトのキープアウト
PCB デザインでの キープアウト は、銅箔オブジェクトが交差できないように配置した、ユーザ定義の領域、または境界線です。一般的に、自動で銅箔を配置する操作(例えば、ポリゴンやインタラクティブ配線)で配置する領域をコントロールするために使用します。また、キープアウトは、銅箔オブジェクトを手動で配置する時に無効な場所を表します。
キープアウトオブジェクトは、レイアウト設計中、禁止領域として、既存の Clearance Constraint Rules を使用して、配線をコントロールし配置違反を検出します。しかし、他のオブジェクトと違って、ネットを割り当てたり、出力、または印刷に表示できません。キープアウトは、全体的な Clearance ルールで指定した通り、その領域から他の銅箔オブジェクトが交差するのを防ぐ '妨害' オブジェクトとして働きます。
Altium Designer 17.1 では、特定オブジェクトのキープアウト 機能を導入し、キープアウトの作成や適用に関して改善しました。配置したキープアウトオブジェクトは、どのタイプのオブジェクト(例えば、トラック、銅箔領域、ビア、パッド)へ適用するか指定できます。
PCB エディタ(や、PCB ライブラリエディタ)で、キープアウトとして割り当てたオブジェクトは、現在の Keep-Out layer color で表示されます。特定の信号層へ設定したキープアウトオブジェクトは、外形がキープアウト色で表示されます。All Layers に設定したキープアウトは、Keep-Out Layer 自体にキープアウト色で塗り潰しで表示されます。
キープアウトは、配線できない基板領域(例えば、電気的に高感度、または高電圧領域)や、特に、Fiducial、テストポイント、機構的に利用できない領域(例えば、取付穴、または PCB のコーナー)のような銅箔を露出する場所を定義するために理想的です。特定オブジェクトのキープアウト 機能の特徴は、特定の キープアウトの制限 を割り当てる時、他のオブジェクト上にキープアウトを配置できることです。例えば、ビアのみに制限する時、既存の銅箔領域(例えば、Polygon Pour)上にキープアウトを配置して、自動化した Via Stitching の範囲をコントロールできます。
特定オブジェクトのキープアウトは、PCB エディタや PCB ライブラリエディタで配置できます。
キープアウトの配置
キープアウトは、Place » Keepout メニューから配置します。指定したキープアウトスタイル(トラック、フィル、リジョン、アーク)は、現在のアクティブレイヤに配置されます。キープアウトのプロパティを選択し、特性、レイヤ、オブジェクトタイプの制限を編集できます。Keepout ダイアログのオプションは以下です:
- Restricted for Layer – Keepout Layer を設定。これにより、どのレイヤの銅箔オブジェクトか限定されます。
- Keepout Restrictions – キープアウトで制限するオブジェクトタイプを指定します。オブジェクトタイプの選択を解除すると、そのタイプのオブジェクトに関する Clearance Rule は適用されず、そのタイプのオブジェクトは配置できます。
ポリゴンのコントロール
下図の PCB レイアウトの例では、キープアウトのフィルは、高電圧の領域(GND に接続するポリゴンから電気的に十分隔離する必要がある)の multilayer のパッドの周りに追加されています。キープアウトのフィルは、All Layers に設定し、Copper オブジェクトのみ制限するよう設定します(ポリゴン、フィル、リジョンを禁止し、トラック、パッド等は許可します – 言い換えると、Clearance 違反ルールは、'copper' として分類したオブジェクトのみ適用します)。
この場合、ポリゴンが適切な距離でパッドをよけるように、更にキープアウトは Top Layer へ追加できます。下図では、他の 2 つのキープアウトのフィルが、Top Layer に追加されています(ここでは、明確に確認できるよう、シングルレイヤモードで表示しています)。そのキープアウト領域は、2 つの重なったフィルではなく、1 つのリジョンで作成できることに注意してください。
ポリゴンを追加した時、キープアウトにより、リジョンの周りの各レイヤに関して、異なるクリアランスがポリゴンに適用されます。この例で、キープアウトに関連したクリアランスは、カスタム Keepout Clearance Rule(以下をご覧ください)のため、通常のオブジェクトより大きくなることに注意してください。
キープアウトによるポリゴンの状態は、下図のように、シングルレイヤの 3D モードで表示した時、明確に確認できます – 左が、Top Layer で、右が Bottom Layer です。
multilayer の銅箔領域にあるビアオブジェクトをキープアウトで制限することで、自動化されたビアスティッチング (Tools » Via Stitching/Shielding) の範囲をコントロールできます。キープアウトは、All Layers、または銅箔領域のレイヤの 1 つに設定できます(それらのレイヤ間のビアが、キープアウトで制限されるように)。
下図の簡単な例では、レイアウトの左上と左下にキープアウトが追加されています。これらは、ビアオブジェクトを制限するために設定しています(自動化されたビアスティッチングがそれらの境界内に配置されるのを防ぎます)。
このキープアウトは、通常のように既存のトラック、パッド、ビアを避けると同時に、ビアスティッチングも、Clearance ルール通りに避けます。
ライブラリコンポーネントでのキープアウト
キープアウトは、PCB エディタワークスペース内で適用する方法と同様に、PCB ライブラリエディタでコンポーネントフットプリントへ追加できます。
下図に示すコンポーネントフットプリント(定格電圧 3kV のコンデンサ)へ追加した All Layer のキープアウトは、全てのオブジェクトを制限するように(トラックは許可します)設定します。そのため、そのコンポーネントを使用するレイアウトでネットコネクションを有効にします。そして、他のオブジェクトタイプの配置は制限されます。
Altium Designer の特定オブジェクトのキープアウト機能は、クエリ (そのため、Design Rules)、PCB Inspector や PCB List パネルや、インポートした/古い PCB デザインドキュメントに反映できます。
キープアウトの Clearance ルール
キープアウトに関するクリアランス制約は、Electrical Clearance ルールで決めます(Design » Rules をご覧ください)。キープアウト用の別のクリアランス制約が必要な場合、Custom Query で Attribute Check 内の IsKeepOut
を適用して、特定のルールを作成します。
カスタムのキープアウトの Clearance ルールは、既存(全体)の Clearance ルールより高い優先度に設定します。以下の例で、ベースの Clearance ルール (Clearance
) と、キープアウト用 (Clearance_to_Keepouts
) のルールが作成されています。基板レイアウトの図で示す通り、2 つのパッド間を配線しているトラックは、Top Layer のリジョン(左)より大きい間隔でキープアウトのリジョン(右)を避けます。
プリミティブオブジェクトをキープアウトへ変換
信号層のプリミティブオブジェクトは、Convert Primitives to Keepouts コマンド (Tools » Convert » Convert Selected Primitives to Keepout) を使用して、同じレイヤにキープアウトへ変換できます。
複数のプリミティブオブジェクトは、標準のセレクト方法(Ctrl/Shift + クリック、または lassoing)を使用してから Convert コマンドを適用して変換できます。その Keepout Layer や適用したオブジェクトの制限を編集するには、変換したオブジェクトの Keepout プロパティ ダイアログを使用します。
パネル経由の利用
ボードデザインの特定オブジェクトのキープアウトは、PCB Inspector、PCB List、PCB Filter パネル経由で利用できます。
PCB Filter パネルでは、IsKeepOut
クエリ言語を使用して、デザイン内のキープアウトオブジェクトを探し、(任意で)セレクトできます。PCB Inspector パネルは、ワークスペースでセレクトしたキープアウトオブジェクトの属性を表示、編集するための効率的な方法です。
PCB List パネルは、セレクトしたタイプ(例えば、以下の List パネルの図に示す、キープアウトのフィル)のキープアウトオブジェクトをリスト表示、セレクト、編集するために使用できます。比較のために、標準の Top Layer のフィル(リストの最下部)も表示してあります。デザインに含まれる全てのフィル(または、リジョンのような他のタイプのオブジェクト)をキープアウトとして割り当てる場合、PCB List パネルには、キープアウトオブジェクトの Restriction(制限)属性も含まれます。
以前のバージョンの Altium Designer(バージョン 17.1より前)では、キープアウト機能はあまり改良されていませんでした(全ての信号層に関して、‘妨害’ オブジェクトとして働くように、標準のプリミティブオブジェクトを Keep-Out Layer に配置しました)。プリミティブオブジェクトには、‘Keepout’ オプションのチェックボックス(生成する出力にキープアウトのオブジェクトが含まれるのを防ぐ)がありました – そのオプションを有効にした時、オブジェクトの外形は、Keep-Out Layer の色で表示されました。
現在の Altium Designer では、専用のキープアウトオブジェクトを使用します。そのため、以前のバージョンの PCB ドキュメントを開く時、デザインにあるキープアウトは、改良されたキープアウトオブジェクトに変換される必要があります。自動化されたキープアウトオブジェクトの変換は、以下の通りです:
以前のバージョンのドキュメントを、現在のバージョンで開く
- Keep-Out Layer のプリミティブオブジェクト → 変換 → キープアウトオブジェクトは、All Layers(オリジナルの Keepout チェックボックスオプションに関係なく)に設定されます。Keep-Out Layer 上に表示されます。
- Keepout オプションが有効で、信号層のプリミティブオブジェクト → 変換 → キープアウトオブジェクトが、同じレイヤに設定されます。
現在のバージョンのドキュメントを、以前のバージョンで開く
- All Layers に設定されているキープアウトオブジェクト → 変換 → Keepout オプションが有効で、Keep-Out Layer のプリミティブオブジェクトになります。
- 信号層に設定されているキープアウトオブジェクト → 変換 → Keepout オプションが有効で、同じレイヤのプリミティブオブジェクトになります。
Altium Designer は、Import Wizard (File » Import Wizard) による自動化された変換機能を使用して、他の設計ツールのファイルをインポートできます。他の設計ツールのPCB デザインファイルに含まれるキープアウトオブジェクトは、可能な場合、ウィザードによって特定オブジェクトのキープアウトに変換されます。
ウィザードのキープアウト変換プロセスは、普及しているECADシステム(例えば、Mentor® Graphics Pads™ や Cadence® Allegro™)のボードデザインと互換性があります。また、正しいキープアウトの変換は、IDF エクスポートプロセス中、行われます。