コンポーネント、モデル、ライブラリの概要

 

このアーティクルでは、コンポーネント、モデル、ライブラリと、それらの関係について説明します。 コンポーネント - ライブラリ間の関係を定義し、管理するための手法が解説されています。また、モデルの検索順序に関する説明や、より効果的に検索を行うオプションについても説明しています。

コンポーネントは、エレクトロニクス製品の基本ブロックです。 デザインキャプチャとインプリメンテーションのプロセスでは、コンポーネントは様々な方法で表現できます。回路図では論理的なシンボル、PCB ではフットプリント、シミュレーション用には SPICE 定義、シグナルインテグリティ解析には適切な解析用の記述、3D コンポーネントや PCB ビジュアライゼーションには 3 次元表示用の記述が使用されます。これらの表現全てがコンポーネントに必要であるとは限りませんが、少なくとも、コンポーネントを回路図に配置する前に要求される、最小限度の記述というものが存在します。最初のコンポーネントを作成する時に何ができるか、また、プロパティやパラメータはどのように追加するか、様々な設計プロセスのパーツとしてモデルはどのようにコンポーネントをインプリメントするか、について説明します。

コンポーネント(部品) - 基本のビルディングブロック

コンポーネントは、エレクトロニクスのデザイン (回路図、PCB レイアウト) 上に配置される構成要素に与えられる一般的な名前です。デザインキャプチャのフェーズごとに、コンポーネントはいくつもの記述を持つ場合があります。従って、インプリメンテーションの進展に依存して、異なる状況から名前を参照されることも珍しくありません。コンポーネントの定義には柔軟性が要求されるので、ある設計フェーズから次の設計フェーズへとその全ての情報とリンクは容易に適合、移行できる必要があります。
なぜなら、回路図のキャプチャに始まるエレクトロニクス設計において、どんな回路図に配置するにせよ、コンポーネントには常に最低限の要求があるからです。少なくても、回路図ライブラリ上でコンポーネントの名前を省くわけには行きません。それは単一かマルチパートの形式で、ピンやグラフィックシンボルを備えており、別の表示オプションを持っていることもあります。

図 1. コンポーネントは 1 つ以上のパーツを持つことができます。

一度、回路図上に配置され、グラフィック表示が割り当てられると、コンポーネントはより一般的な シンボル と言う名前で呼ばれるようになります。 そこでは、グラフィカルに表示されているので、シンボルには物理的な形状を定義する描画オブジェクトと、電気的な接続ポイントや論理を定義するピンが含まれることになります。回路図設計の際に、論理シンボル と称されるシンボルのことはご存知かも知れません。
この最初の、ごく単純な定義は、コンポーネントをより簡単、より柔軟に適合することで、非常に複雑なエレクトロニクスの構成を表現しています。 あるコンポーネント、例えば、レジスタネットワークやリレーなどは、回路図上に別々に配置できる一連のパーツとして描くことができます。これらは、マルチパートコンポーネント として参照され、各ピースは単純にパーツと呼ばれます。
別な言葉としては ドメイン があります。これは、特別なタイプ、グループ、エリアを表します。Altium Designer の環境の有効なドメインには、PCB レイアウト、SPICE シミュレーション、シグナルインテグリティ解析、そして 3D が含まれます。
既に述べたとおり、状況によって区別されるいくつかの用語が、PCB のレイアウトや設計において使用されています。フットプリントは、PCB レイアウト上のコンポーネントを表すモデルのことです。従って、フットプリントは、ボードレイアウト上でコンポーネントを配置したり、接続したりするのに必要なスペースを定義するコンポーネントの形状や、PCB のパッド一式がグループ化されたものを表します。一度、PCB 上に配置されたコンポーネントは、以後、物理コンポーネント とみなされます。
ほとんどの場合、論理シンボルもまた物理コンポーネントであると言えます。 この場合、それぞれの関係性もほぼ同様であると言えるでしょう。 しかし、特定の例外もあります。それは、コンポーネントがデータベースライブラリから配置された場合で、外部データベース内の記録が物理コンポーネント(またはシンボル、モデル)を表します。
さて、ここから、コンポーネントをどのように定義し、記述するのか、異なるタイプの表現はありえるのか、そして、より特殊化されたタイプはどのようにサポートされているのか、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

コンポーネントの属性

Altium Designer のコンポーネントにとって、シンボルについての最小限の定義とリンクが説明の出発点になります。これにより、後ほど、設計やキャプチャの別プロセスで、違った表現でコンポーネントを説明するのに大幅な柔軟性が生まれます。Altium Designer では、ユーザの求める設計仕様に適合するコンポーネントを構築することができます。

様々な属性、リンク、記述を、どんなコンポーネントにも容易に定義でき、そのためのユニークな プロパティ(属性) を Component Properties ダイアログから作成できます。これによって、ユーザは正確に設計のあらゆる段階で必要な表現や実行タイプを作成できます。

図 2. 配置されたコンポーネントをダブルクリックすると、Component Properties のダイアログが表示されます。ここで、各コンポーネントについての特定の属性、ライブラリへのリンク、グラフィック表示、検索場所などを定義できます。

Component Properties ダイアログは使用しているデザインエディタ (回路図、PCB、その他) によって、表示が少し異なります。

コンポーネントのタイプ

コンポーネントを作るには、異なるいくつかの方法があります。標準コンポーネントと非標準コンポーネントのタイプ、また、マルチパートのコンポーネントについて見てみましょう。

同じグラフィックで異なるコンポーネント

物理コンポーネントのそれぞれに対して、単一のコンポーネントシンボルがある場合

このタイプの表し方は、論理シンボルが集積回路のような物理コンポーネントと同じである場合、どんなコンポーネントにとっても理想的です。コンポーネントは特別な表現、または PCB フットプリント、シミュレーション、3D モデリング情報などのモデル(詳細は以下)を含んでいます。

グラフィック的に等価なコンポーネントに対する単一のシンボル

論理的には等価であるが、やや異なった仕様になっているコンポーネントがあります。例としては、様々な論理ファミリー (74ACT32 や 74HC32) に使用可能な論理ゲートがあります。この場合、シンボルはいったん描かれ、その後、それぞれの等価コンポーネントの必要に応じて別の名前やエイリアスが定義されます。コンポーネントのエイリアスは Schematic Library のエディタパネルに追加されます。コンポーネントエイリアスは名前の違う一種類のコンポーネントであると考えることもできます。

あるタイプのコンポーネントに対して単一のシンボル

設計の物理レイアウトの要求に従って、特定のコンポーネントが複数の PCB フットプリントへリンクする必要がある時、PCB コンポーネントにはコンポーネントタイプに関して特別に考慮する点があります。例としては、ライブラリ内ではなく、コンポーネントを回路図上に配置する時に定義した値属性を持つ、抵抗などのディスクリートコンポーネントが挙げられます。

同じコンポーネントで異なるグラフィック

Altium Designer では同じコンポーネントに対する複数のシンボルをサポートしています。例えば、従来の描画形状を使用して、シンボルを描くように求める顧客がいる一方で、別の顧客は標準仕様に従ったシンボルを求めたりすることがあります。あるいは、同じコンポーネントで異なったシンボルが要求されるかもしれません。新しいモードを追加して、あるいは回路図ライブラリエディタの Tool メニューから、または、Mode ツールバー(図 3)を使用して、コンポーネントと一緒に格納されているシンボル用として、追加のグラフィック表現を定義することができます。

図 3. 複数のグラフィック表現を同じコンポーネントに定義するには、Mode 機能を使用します。最初のモードは、"Normal" と呼ばれます。それに続くモードには "Alternate 1" が付けられています。作成されるどのモードも、コンポーネントと一緒に自動的に格納されます。

マルチパートコンポーネント

図 4. 特別なコンポーネントは必要に応じてコンポーネントタイプを設定。ここでは、マルチパート用にどのパーツを今、見ているかについても確認できることに注意してください。

いくつかの例では、ある物理コンポーネントを表現するのに複数のシンボルを用いるのが適切です。例えば、抵抗ネットワーク中の各抵抗とか、コイルやリレーの接点などの場合です。
追加パーツは、ライブラリエディタ内の Tools メニューで追加または削除されます。各パーツはそれぞれに描画され、対応したピンが追加されます。

標準でないコンポーネント形式

全てのコンポーネントが PCB の実装、部品表 (BOM) で必要なわけではありません。また、PCB に実装する全てのアイテムを回路図上に表す必要があるわけではありません。Altium Designer では、標準でないコンポーネントタイプのために(ライブラリエディタ、または回路図エディタの)Component Properties ダイアログにある Component Type 属性が用意されています。
例えば、PCB を接続するようなシャーシに組み込む部品を回路図に含めることで回路図がわかりやすくなります。このコンポーネントが PCB の BOM で必要なければ、コンポーネントタイプを Graphical に設定することができます。グラフィックコンポーネントは、回路図の電気的な検証や BOM には含まれず、回路図を PCB に同期させる間もチェックされません。この場合、Component Type を Graphical に設定します。
コンポーネントの別の特別な種類としては、テストポイントがあります。このコンポーネントは、回路図と PCB の両方で必要となりデザインの同期中にチェックされますが、BOM には含まれません。この場合、Component Type を Standard (No BOM) に設定します。 
特別なコンポーネントの種類の別の例として、ヒートシンクがあります。一般的に、それは回路図には表示されず、回路図の電気的な検証でチェックする必要はありませんが、BOM に含める必要があります。この場合、Component Type を Mechanical に設定します。 

コンポーネントパラメータ

パラメータは、コンポーネントに色々なテキスト情報を結びつけるためのものです。これには、コンポーネントの電気的な詳細情報(例えば、ワット数または許容差)、コンポーネントの購入先、在庫状況、設計者による注記、コンポーネントのデータシートの参照情報などを含めることができます。この情報はパラメータの追加によってコンポーネントに含められます。つまり、ライブラリエディタでコンポーネントを作成している時や、一度コンポーネントを回路図に配置した時 (DBLinkファイルを使用)、またはデータベースライブラリ (DBLib または SYNDBLib) から配置している時、自動的に含められます。

コンポーネントのコンポーネントパラメータは、Component Properties ダイアログで直接、追加できます:

コンポーネントにパラメータを追加

図 5. 名前や値をコンポーネントのパラメータとして定義することができます。また、Component Properties からワークスペースにパラメータ情報がどのように現れるかについてのグラフィック属性を定義することができます。

パラメータセクション内に定義されたどんなパラメータでも、Annotate ダイアログ上の Match By Parameters 領域に作ることができます。 これは、定義済みで詳細情報込みのユニークなパラメータを使って、マルチパートコンポーネント用の特別なパーツ群として、後でまとめたい場合に便利です。

コンポーネントライブラリにパラメータを追加

上記の例は、Component Properties ダイアログを使用したマニュアル操作による、各ライブラリコンポーネントへのパラメータの追加を示しています(図 5)。コンポーネントライブラリにパラメータを追加するには、もっと効率的な方法が必要かもしれません。このような場合、Parameter Manager ダイアログの方が良いオプションかもしれません。

図 6. 回路図ライブラリを開いて、Parameter Editor ダイアログ (Tool » Parameter Manager)を表示します。複数コンポーネントのパラメータ値を効果的に設定することができます。 

パラメータとしてデータシートを参照

コンポーネントのデータシートを使用した設計プロジェクトから、参照資料へのアクセスが必要になるかもしれません。Altium Designer では、コンポーネントパラメータを追加して回路図上のコンポーネントからデータシートを参照するための 2  つのオプションがあります。最初のオプションでは、F1 ボタンを使用して、特定の参照ドキュメントにアクセスできます。2 つ目は、複数参照のためのオプションです。右クリックを使用してメニューを開いてください。

HelpURL のシステム予約名を使用したパラメータがコンポーネントに含まれている場合、カーソルがコンポーネント上か、ライブラリパネルのそのライブラリ名上にある時に F1 キーを押すと、目的の URL にアクセスできます。URL には実際のウェブアドレス、テキストファイル、PDF ファイルが指定できます。
パラメータの値として、参照するドキュメントだけでなく、PDF のページ番号も指定することができます(図 7)。

1 つのドキュメントへのリンク - F1 キーによるアクセス

図 7. ここで、Component Properties ダイアログから、HelpURL パラメータが回路図シンボルに追加されています。カーソルがコンポーネント上にある時に F1 キーを押すと、\Help\CR0118 FPGA Generic Library Guide.pdf#page=93 の値によって参照先 PDF ファイルの 93 ページが開きます。
リンクされた複数のドキュメント - 右クリックによるアクセス

この 2 つ目の機能により、右クリックで表示されるメニューから、ペアになったパラメータと ComponentLinknURL のシステム予約名を使用して、1 つ、または複数の参照先ドキュメントへリンクできるようになります:

 

パラメータ名

パラメータ値の例

1 st パラメータ

ComponentLink1URL

C:\MyDatasheets\XYZDatasheet.pdf

2 nd パラメータ

ComponentLink1Description

Datasheet for XYZ

1 st パラメータ

ComponentLink2URL

C:\MyDatasheets\AlternateXYZDatasheet.pdf

2 nd パラメータ

ComponentLink2Description

Datasheet for Alternate XYZ

同じパラメータのペアを使用して、リンクはいくつでも定義できます。ただし、インクリメンタルな指定はできません。データシートリンクを使用したコンポーネント上で右クリックすると、Reference メニューのエントリが表示されます。メニューから各コンポーネントリンク用のエントリを見つけてください(図 8)。

Libraries パネルでコンポーネントを閲覧する時にも、コンポーネントとデータシートのリンクを使用できます。F1 キーまたはコンポーネント名の上で右クリックすると、リンク先ドキュメント/URLにアクセスします。

図 8. 配置されたシンボル上で右クリックすると、データシートのリンクにアクセスします。

モデル - コンポーネントの特別な表し方

先に述べた通り、ドメインは、Altium Designer における設計プロセスの一部であるコンポーネント表現のタイプ、グループ、エリアとみなすこともできます。従って、モデルは、特定ドメイン用に便利なコンポーネントを扱う際の表し方と言うことができます。これは、PCB ではフットプリント、シミュレーションでは SPICE 定義、シグナルインテグリティ解析では適切な解析用の記述、従来の 3D ビューアや DirectX ベースの 3D ビジュアライゼーションエンジンにおける 3D ビジュアライゼーションでは 3 次元モデルと呼べるかもしれません。コンポーネントは、回路図に配置するためにモデルを添付する必要はありません。しかし、モデルが無いと、他のドメインで扱うことができません。
Model Libraries は、コンポーネント表現の集合体です。これについては、以下のライブラリのセクションで更に詳しく説明します。モデルマッピング情報がコンポーネントと共にどのように格納されていくか、その基本について説明しましょう。

モデルマッピング情報の基本

回路図の段階では、デザインは論理的に接続されたコンポーネントの集まりです。デザインをテストし扱うには、シミュレーション、PCB レイアウト、シグナルインテグリティ解析など、別のモデル化するドメインへそれらを移行させる必要があります。
各ドメインには、コンポーネントに関する情報と回路図シンボルのピンに情報をマップする手段が必要となります。ドメイン情報のいくつかは、モデルファイルの中にあり、そのフォーマットは大抵、事前に定義されています。 例としては、IBIS、MDL、CKT があります。いくつかの情報はモデルファイルには存在しません。例えば、SPICE のピンマッピングやネットリスト生成のデータはシステムで保存、管理されています。
必要なドメイン情報は全て、回路図コンポーネントに含まれていて、追加される各モデルへの個別のインターフェースを格納しています。実際、完成したモデルは、コンポーネントに格納されたモデルマッピング情報やモデルライブラリに格納されたドメインモデル情報の組み合わせです。

図 9. 各ドメインでコンポーネントをどのようにモデル化するかの情報は、モデルファイルに保存されています。どのようにしてシンボルがそれぞれのモデルに接続されるか、確認できます。

コンポーネントは、複数のドメイン用のモデルを持つことができます。また、ドメインごとに複数のモデルを持つことができます。それらのうちの 1 つが現在のモデルとして設定されます。

図 10. 各モデルと各マッピングへの必要なリンクは、それぞれの Model ダイアログで定義されます。

IBIS シグナルインテグリティモデルや VRML または IGES 3D モデルは、使用する前に Altium Designer フォーマットモデルにインポートする必要があることに注意してください。IBIS モデルは、Signal Integrity Model ダイアログ(SI モデルをコンポーネントに追加する時に開きます)で直接インポートします。VRML と IGES モデルは、回路図コンポーネントに追加する前に PCB3DLib にインポートする必要があります。

モデル参照のオプション

PCB3DLib は従来のライブラリタイプで、Altium Designer 10/12、Altium Designer 2013 で使用できません。

コンポーネントに対してモデルを追加する場合、どの程度でモデル検索を制御したいかを定義するオプションがあります。検索範囲はわずかに変化する程度ですが、モデルエディタのダイアログにはこれらのオプション(Any, Library Name, Library Path, From integrated library)が含まれています。

Any - 一致するモデルについて、全てのライブラリを検索。

Library name - 一致するモデルについて、この名称のライブラリのみ検索。

Library path - 一致するモデルについて、この保存場所のこの名称のライブラリのみ検索。

Integrated library - このコンポーネントを配置するために使用した統合ライブラリから直接、モデルを引き抜きます。 統合ライブラリは、有効な場所で利用することができます。

ライブラリ - コンポーネントとモデルの集合体

コンポーネントとモデルは、集合体として格納されています。つまり、ライブラリ です。設計プロセス中、より効率的に利用するためです。ライブラリは、構成要素を含んでいるだけの存在と言えるかもしれません。コンポーネントを作り上げるだけで、完全な定義を必要としません。例えば、説明的な名前である Model ライブラリは、そのライブラリがモデルだけを含んでいることを示しています。一方、回路図ライブラリには回路図シンボルだけが含まれます。
しばしば、ライブラリの構成要素は Altium Designer のファイル用ではない、またはバージョン管理がされてない、不特定のフォーマットで格納されていることがあります。これは、1 人以上のエンジニアが 1 つの設計に従事している場合や、別の場所で設計を行っている場合に、より顕著になります。データベース ライブラリは、全てのシンボル参照、モデルリンク、パラメータ情報が ODBC や ADO に準拠したデータベース、または Excel のスプレッドシートで格納されている場所を意味します。バージョン管理下のデータベース ライブラリは、シンプルな拡張が可能です。そこでは、シンボルやモデルが (Subversion のような) バージョン管理の元でデータベースライブラリに格納されているからです。
それぞれのライブラリや適切なファイルの拡張については、以降で詳しく説明します。

ライブラリタイプ

モデルライブラリ (*.MDL,* CKT,* PcbLib)

各ドメインタイプのモデルは、モデルライブラリ(モデルコンテナとも呼ばれます)に格納されます。モデルのグループ化と組織化はドメイン間で異なります。いくつかのドメインでは、SPICE(.MDL, *.CKT) のように、1 ファイルにつき 1 モデルになっています。別のドメインでは、モデルは通常、パッケージ形式のライブラリ (*.PcbLib) 内にグループ化された PCB フットプリントのようなユーザ指定の分類に従ってライブラリファイル内にグループ化されます。

回路図ライブラリ (*.SchLib)

これらのライブラリには回路図シンボルや、別のモデルライブラリに存在するモデル定義への固有のリンク (実際のモデル自体ではなく、そこへのポインタみたいなもの) が含まれています。

アクティブプロジェクトの回路図ソースライブラリの生成

作成済みのデザインを保存、または正確なライブラリを作成したい場合、アクティブプロジェクトのソースとなる回路図ドキュメントに配置された全てのコンポーネントが格納された回路図ソースライブラリを作成する機能があれば、とても便利です。Design » Make Schematic Library の操作により、実際のプロジェクトで使用する全ての回路図ソースドキュメントを開くことができます。開く準備ができていない時は、ライブラリドキュメント ProjectName.SCHLIB が自動的に作成され、プロジェクトに追加されます。

統合ライブラリ (*.IntLib)

Altium Designer の統合ライブラリは、ソースシンボル、フットプリント、その他の情報(例えば、SPICE やその他のモデルファイル)が 1 つのファイルへコンパイルされたものです。統合ライブラリへコンパイルする利点は、全てのコンポーネント情報を 1 つの移動できるファイルとして利用できるからです。 
コンパイル中、モデルとシンボル間の関連を確認しそれらを 1 つの統合ライブラリへ含めるためにチェックされます。統合ライブラリ内にあるコンポーネントやモデルは、携帯性と安全性を考慮しライブラリをデコンパイル(*.IntLib ファイルを開いて、ソースを解凍)しないと、編集できません。
Altium Designer の70,000 以上のコンポーネントは、統合ライブラリです。必要に応じて、そこからソースライブラリを抽出できます。 

全てのモデルは統合ライブラリとしてまとめられているので、プロジェクトを移動する時、1 つのファイルのみ移動するだけでプロジェクトで利用できます。

作業ライブラリ、または終了済みデザインのアーカイブの生成または再利用

アクティブプロジェクトで使用した回路図ドキュメントに配置された全てのコンポーネントとリンクされたモデルが格納された統合ライブラリも生成できます。プロジェクトライブラリ、またはサードパーティから渡されたライブラリから容易に作成できます。回路図設計が進行中の場合、Design » Make Integrated Library の操作でもアクセスできます。

データベースライブラリ (*.DBLib, *SVNDBLib)

これらのライブラリには、シンボル情報、モデルへのリンク、モデル、パラメータ情報が ODBC ベースや ADO ベース、あるいは Excel スプレッドシート等、Altium Designer に属さないフォーマットで格納されています。
つまり、データベース内のそれぞれの記録は、モデルリンク、データシート参照、あるいはその他のコンポーネント情報と言ったパラメータの全てが格納されたコンポーネントを表しています。その情報には、在庫管理やその他の業務用コンポーネントデータへのリンクを含めることができます。
データベースライブラリには、バージョンコントロール無し (データベース ライブラリ) と、バージョンコントロールあり (SVN データベース ライブラリ) との、2 つのタイプがあります。違いは、参照先のシンボルやモデルを含むシンボルやモデルライブラリの場所です。この違いは、以下のようにまとめられます:

  • Database Library (*.DBLib) - シンボルとモデルのライブラリは、使用している PC のハードディスクか、その他のローカル/ネットワークメディアに格納されます。
  • SVN Database Library (*.SVNDBLib) - シンボルとモデルのライブラリは、Subversion リポジトリ内のバージョンコントロール下に置かれます。
    データベースライブラリには、外部ベンダのデータベースからコンポーネントを直接、配置できる機能があります。データベースライブラリの中に、コンポーネントを完全に構成する一切の情報が、データベースそれ自体に格納されています。つまり、シンボルはただのグラフィック表現、あるいは、その他のモデルと言うことです。

図 11. データベースライブラリには全ての情報が格納されており、コンポーネントを配置する際に読み出されます。

データベースライブラリからコンポーネントを配置すると、適合するデータベースの記録にある関連フィールドを使用し、中間リンクファイルにある定義されたマッピングに従って、そのコンポーネント用のパラメータとモデルの情報がその場ですぐに作成されます。1つ、または複数のこれらのパラメータは、データベースに戻って現在のリンクを維持するのに使用され、配置後は、将来の設計のために同期が取られることになります。

コンポーネントの検索と識別

デザインやライブラリに対する携帯性は一般的な要求であると言えます。ライブラリがデザインと別な場所にあったり、代替えのライブラリを 1 つのデザインで使用することが普通になっています。あるいは、設計者が、会社にあるライブラリのローカルコピーを自宅へ持ち帰って作業したいかもしれません。そのため、ソースライブラリを参照するための柔軟性な方法が必要です。コンポーネントのソースを管理し、正しいコンポーネントを選択できることが重要です。 

Altium Designer では、柔軟性と管理のしやすさの両方を提供することで、参照ライブラリの場所を容易に切り替えることができます。また、デザインから正しいコンポーネントを取り出して使用していることを識別し、確認します。

ライブラリからコンポーネントを配置する際に、どのライブラリ(DBLib の場合はテーブル)からコンポーネントを取り出したか、覚えておく必要があると言うのがその理由です。どこから持ってきたコンポーネントか知ることは、デザイン管理の記録として重要になります。コンポーネントを更新しようとしてみたことが一度でもあるなら、また、オリジナルのライブラリを持っておらず、限定的な設計環境で作業を強いられたことがあるなら、このような問題がどんなにフラストレーションを引き起こすか、よくご存知のはずです。従って、どんな作業環境の構成にも適合できる定義可能な管理レベル、そして、メンテナンスが容易な設計コンポーネントの統合方法、この 2 つを提供するソリューションが必要です。 

図 12. コンポーネント A が、ライブラリ A とライブラリ B の両方から参照される同じコンポーネントであることを示しています。コンポーネントのライブラリパス、ライブラリ名を変更、または DBLib のテーブル名を変更してソースコンポーネント間を切り換えることができます。

検索場所の確認

コンポーネントを確認する必要がある時、Altium Designer は特定の場所でモデルやライブラリを検索します。検索については、既に説明したように、モデルエディタからのモデル参照をどのようにコントロールするかを指定するオプションも考慮されます。例えば、回路シミュレーションを行う場合、各コンポーネントにリンクした SPICE モデルが読み出され、XSPAICE シミュレーションエンジンによって使用されます。他には、回路図から PCB レイアウトにデザインを移行する場合が挙げられます。この過程の間は、各コンポーネントのフットプリントが検索され、PCB に配置されます。これらの場所にあるどんなモデル/ライブラリも、available libraries として参照されます。つまり、どんなモデル/ライブラリでも、プロジェクトや設計環境で使用できることを意味しています。

現在のプロジェクトで利用できるモデル/ライブラリを Available Libraries ダイアログで確認することができます。Libraries パネルで Libraries ボタンをクリックするか、または Design » Add/Remove Library を選択してダイアログを開きます(図 13)。

Available Libraries ダイアログ

図 13. 全てのモデルが統合ライブラリに結び付けられているわけではありません。検索の順序は左から右へ、Available Libraries ダイアログのタブ(Project、Installed、Search Path)を通じて行われます。実際は、available libraries はこのダイアログ内の上から順に存在しているはずなので、全体の検索順序は簡単にセットアップできます。

検索可能なモデル/ライブラリが存在する場所:

  • Project - これらのモデル/ライブラリは、プロジェクトとそのドキュメントだけにリンクされ、利用可能になります。この方法の利点は、プロジェクトを開く時はいつでもモデル/ライブラリを利用できることです。不利な点は、もし、プロジェクトファイルをある PC から他の PC へ移動した場合、Project フォルダ構造に保存されていないモデル/ライブラリを忘れてしまうことです。
  • Installed - これらのモデル/ライブラリは、Altium Designer 環境と関連しているので、コンポーネントは開いている全てのプロジェクトで利用できます。Installed Libraries のリストに追加されたどんなモデル/ライブラリも、指定されたパスに従ってインストールできます(詳細は以下)。
  • Search Path - これらのモデル/ライブラリは、Options for Project ダイアログの Search Path タブで検索パスを指定すると(または、Available Libraries ダイアログにある Search Path タブの Paths ボタンからアクセスすると)、プロジェクトで利用できます。各検索パスではフォルダを定義し、もし、Recursive オプションが有効ならばサブフォルダを含めることができます。Search Path で見つかった全てのモデルとライブラリファイルは、有効になります。Search Path フォルダに多くのファイルがある場合、検索パスを使用してモデルを検索することは、遅くなる傾向があることに注意してください。

 Altium Designer の環境でモデル/ライブラリの場所を柔軟にコントロールできる時、各モデルタイプで正しいファイル拡張子を使用する必要があります。例えば、フットプリントには *.lib または *.pcblib と言う拡張子が必要です。同様に、SPICE .SUBCKT には、*.ckt ファイルで、SPICE .MODEL には *.mdl ファイルである必要があります。モデル検索が一致しない時は、Message パネルにエラーが表示されます。 

ライブラリを相対パスでインストール

Installed Library のリストに追加されているどんなライブラリでも、指定パスに関連付けてインストールすることができます。Available Libraries ダイアログの Installed タブが有効なら、異なるライブラリを簡単に切り替え、デザイン内部のコンポーネントのソースを管理できるようになります。パスのエントリを変更すると、自動的に既存のライブラリが新しい場所で見つかったとしてリストにリロードされます。

ライブラリの起動と終了

図 14. 新しい場所で見つからないリスト内のライブラリは赤くハイライト表示されます。

現在、Installed Libraries のリスト(Available Libraries ダイアログの Installed タブからアクセス)に追加されている各ライブラリは、'Activated' または 'Deactivated' になります。これにより、どのライブラリを設計に使用しているのか、視覚的に素早く、特定できるようになります。図 14 のように、Activated オプションで、シンプルに切り替えることができます。
有効にされていないライブラリはアンインストールされているものとして扱われますが、リストには残っているので、デザインの必要に応じて、素早く有効にできます。特定の関連パス上に発見されなかったライブラリは、有効にできません。

Component Properties ダイアログ

Available Libraries ダイアログからのコンポーネントの検索と特定に加え、Component Properties ダイアログ(図 15)にも、一段上の管理方法があります。

コンポーネントレベルでライブラリ名を変更

コンポーネントを特定するための次の下位レベルは、ライブラリ名をコンポーネント自体に変更することです。Component Property ダイアログには、コンポーネントを特定する 3 つのレベルがあります:

  • Design Item ID - 既存の有効なライブラリの中で、そのコンポーネント名がシート上のデザインコンポーネントに一致する最初に見つかったライブラリコンポーネントを使用します。
  • Use Library Name - 有効なライブラリの中で、特定のライブラリ名に一致し、コンポーネント名がシート上のデザインコンポーネントに一致する最初に見つかったライブラリコンポーネントを使用します。
  • Use Database Table Name - 特定のライブラリ名に一致する有効なライブラリの中で、または、特定のテーブル名に一致するデータベーステーブルのライブラリの中で、コンポーネント名がシート上のデザインコンポーネントに一致する、最初に見つかったライブラリコンポーネントを使用します。

図 15. Component Properties ダイアログから、別のレベルでコンポーネントを特定するためにコントロール。
  • コンポーネント名(Design Item ID)、Use Library Name、Use Database Table Name は全て、コンポーネントを配置する属性ダイアログの Library Link の領域で、特定することができます。Library Name、または Table Name の使用は、選択オプションで有効/無効を切り替えることができます。
DBLib からのテーブル名の変更

統合ライブラリから始めに配置したデザインコンポーネントのために、参照ライブラリのベースを変更することができます。デザイン中の全てのコンポーネントを選択すると、新しく変換された DBLib、または SVNDBLib に変更できます:

  • Use Library Name オプションを無効にします(新しい DBLib/SVNDBLib が Installed Libraries のリストに追加され、アクティブで、以前の統合ライブラリが削除、または有効でないことを確認してください)。
  • Use Library Name オプションが有効のまま、代わりに、DBLib/SVNDBLib の名前を入力します。選択されたコンポーネントが全て、同じテーブル名に所属している場合、あるいは、blank/disable のままになっている場合、Table Name は特定できます。つまり、データベースの中のいずれかのテーブルで、最初に見つかったものがそれぞれのケースで使用されます。

    正しいライブラリが実際に、デザインコンポーネントのためのリファレンスとして使用されていることを確認するには、Component Properties ダイアログの Library Link 領域にある Validate ボタンをクリックします。ダイアログが表示され、デザインコンポーネントと最初に一致したパスとライブラリがそこに表示されます。

 

 

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